離島の活性化支援(東京都・小笠原諸島)

支援テーマ

世界遺産母島で「海底熟成ラム酒事業」の立上げ

対象企業の概要

業種:小笠原母島観光協会
人数:理事8名+従業員3名
売上規模:2,100万円

起きていた問題・課題

小笠原母島は地場の飲料・食品加工業者が殆どいないため、農業・漁業に関わる者以外になかなか雇用が生まれ辛い環境となっています。
そこで今回は小笠原母島観光協会が音頭を取って農協・漁協・飲食店・宿泊施設等と力を合せて新たな観光事業を興すことで地域活性化を図りつつ、母島で唯一の酒類製造業である小笠原ラム酒製造元においても「当該事業」を通じて新たな需要の掘り起しを図ると共に、新たな雇用を生み出す起爆剤としたいと考えています。

改善後の結果

今回の海底熟成ラム酒事業に参加する3社(小笠原母島観光協会・母島漁協・小笠原ラム酒醸造元)が小笠原母島の観光事業を活性化したいと言う「想い」を共有できたことで、母島ならではの画期的取組みとして「海底熟成ラム酒事業」の実施体制を整えることが出来ました。

 更に島内飲食店・宿泊施設・土産物店等の協力を得ることも出来て、結果として事業初年度から数百本の販売実績を達成すると共に、現在も毎年千数百本の販売実績を維持しています。

課題解決に向けた支援の流れ

支援のポイント

1.ラム酒・海底熟成の成否については「発酵の専門家」の意見も聞き検証しました

一部離島で生産する「焼酎」を海底熟成している取組みはあるものの「ラム酒海底熟成」は日本で初めての取組みであったので、「南国の地で年間を通じて海水温が非常に安定している海域での海底熟成は酒類の熟成環境として非常に恵まれている」との専門家アドバイスも頂き事業プラン策定をスタートしました。

 更に、母島において唯一ダイビング事業を行っている漁協と連携できたので、単に海底熟成を行うだけでなく1年を通じてラム酒の海底熟成の進捗状況を管理できたことが事業立ち上げのポイントとなりました。

2.島内滞在中の観光客の新たな楽しみ作りを行うことで観光客の満足度を高めました

最近はお酒の楽しみ方が多様化しており、ハイボールやカクテルなどを好む男性・女性も増えています。
小笠原ラム酒も「サトウキビ由来の豊潤さ」で元々人気は高いものの、母島特産品である「パッションフルーツ・島レモン・島トマト」等の南国フルーツで割れば更に旨味が増し、小笠原母島ならではのカクテルが出来上がります。小笠原諸島への観光客は年間3万人弱であり、その内母島来島者は約8000人と言われていますが、この取組みで島内滞在中の楽しみが増えたことで更なる観光客掘り起しも可能となりました。

3.「東京都振興公社及び島しょ振興公社」の補助金制度を最大限活用させて頂きました

観光協会自体が公益性の高い団体であり会員の会費で運営されているために、新規事業を展開すると言っても事業予算を独自に確保することが難しいという状況でしたが、「東京都地域中小企業応援ファンド・地域資源活用イノベーション創出助成事業」の補助金を活用することを提案して申請書作りを進めました。
また「東京都島しょ振興公社・島しょ地域振興助成金」も併せて利用することで、事業者の自己負担をかなり軽減化することができるということで、こちらの制度についても併せて利用させて頂きました。

支援後の所見・コメント

事業計画に特殊性(地域性・独自性)があり、事業計画を策定する段階から島内関係者の関心は高かったが、事業経費をどこから捻出するかということで途中何回か挫折し掛けました。しかし「東京都振興公社及び島しょ振興公社」の補助金が利用できる可能性があるという提案をさせて頂いた辺りから実現性が高まりました。
また小笠原母島観光協会が中心となって漁協・小笠原ラム酒醸造元と三位一体の取組みが大きな推進力となったことは言うまでもありませんが、その他の島内飲食店・宿泊業・土産物店等の協力が得られたことも成功の決め手となったと言えます。